これぞww

これが本当の口語訳wwww
そういえば誰かが「次お前はじめに当たるやん」とか言ってたけど・・・問題なしw

上にさぶらう御猫は[第九段]


清涼殿ではかわいい猫ちゃんを飼っているんだけど、その猫ちゃんを帝がすっごく可愛がってて、五位の位を与えて「命婦おとど」っていう名前まで付けていらしたの。
ある日、帝が可愛がっているその猫ちゃんが縁先に出て寝ちゃってたもんだから、猫ちゃんのお世話係の馬の命婦
「まあ、お行儀が悪い。中へお入りなさい!」
って呼ぶんだけど、猫ちゃんは言うことを聞かないで、日向ぼっこして寝たまんまだったのね。
馬の命婦は、ちょっと驚かせれば中に入ってくるって思ったじゃないかしら?
「翁丸!どこにいるのー?命婦おとどをかんでおやりー」
って言ったの。(翁丸っていうのは、宮内で飼われている犬ね)
そしたら、本気にしちゃったおバカな翁丸は、猫ちゃんに走りかかったの!
びっくりした猫ちゃんは、慌てて御簾の中に飛び込んだってわけ。
間が悪いって言うのかしら?
朝ご飯を食べていらした帝が、一部始終を見ていらして、すごく驚かれたの。
そして、猫ちゃんを腕に抱いて殿上の侍臣たちを呼ばれたの。そしたら蔵人の忠隆様と成仲様が駆けつけて来たのね。
帝は、
「翁丸をこらしめて、犬島へ追放しなさい!今すぐに!!」
と仰ったから、人が集まって来て翁丸を駆り立てて騒ぎが起こったの。
一方、帝はお世話係の馬の命婦もお叱りになって、
「世話係を代えてしまおう。お前では、とてもじゃないけど安心できないからね!!」
と仰ったの。
馬の命婦は謹慎して、御前にも出てこなかったわ。
翁丸のほうは、追い立てられて、滝口の武士達によって外に追い出されちゃったの。


「かわいそうに、堂々として歩き回っていたのに・・・。三月の節句の時なんか、行成様が柳の冠、桃の花のかんざしに桜の枝を腰に挿してあげたのに。あの時には、まさかこんなひどい目にあうとは思ってもいなかったでしょうね」
「定子様のお食事の時なんか、必ずおそばにいたから、いなくなってさびしいわ」
と女房たちと話をして、3・4日経ったお昼ごろ、ひどい犬の鳴き声がするもんだから、どんな犬がこんなにも長い間鳴くの??と思って聞いていたの。
そしたら、たくさんの犬が、鳴き声のほうへ様子を見に行っていたわ。
しばらくしたら、掃除役の女の人が走ってきて、
「大変です!蔵人の方がお二人で犬をお打ちになっています。あれでは、犬はきっと死んでしまいます。追放した犬が戻ってきた、と言って懲らしめていらっしゃるんです!」
と言ったので、私は、それはきっと翁丸だって思ったのよ。
忠隆様や実房様などが打っている、と聞いたから、使いの者に止めに行かせたんだけど、すぐに犬の鳴き声はやんだわ。
でもね、使いの者が帰ってきて、
「犬は死んだので、陣屋の外に捨ててしまいました」
と言ったのを聞いて、私はすごく悲しくって、心を痛めたもんよ。
その日の夕方、ビックリするくら傷が腫れた犬が震えながら歩きまわっているから、
「翁丸かなー?いまどき、翁丸の他にこんな姿の犬が歩き回っているはずないよ!」
と女房の一人が言うから、
「翁丸!」
と呼んでみるけど、犬は聞こえないフリをしていたの。
たくさんの女房たちが「翁丸だよ!」とか「いやいや、そうじゃないよ」と、口々に言うので、定子様が、
「右近なら見分けられるはずよ。呼んできて!」
とおっしゃったので、右近が参上してきたわ。
定子様が、
「この犬は翁丸かどうかわかる?」
とお聞きになる。
「うーん、似てはおりますがひどい状態ですね。それに、私が名前を呼ぶと、すぐに喜んでやって参りますが、この犬は呼んでも寄って来ません。違う犬だと思います。翁丸は『打ち殺して捨ててしまった』と人が申しておりました。二人がかりで打ったといいますので、生きてはいないでしょう」
と右近は答えたので、定子様はとてもお心をお痛めになったの。
暗くなってから、例の傷だらけの犬に食べ物をあげたけど食べないので、翁丸とは違う犬だと決めこんでいたの。


翌朝、私に鏡を持たせて、定子様が髪の毛を整えたりお顔を洗ったりなどをなさるので、お側にいたら、例の犬が柱の下でうずくまっていたのを見つけたの。
「この前は、翁丸をこっぴどく打ったものですよね。死んでしまったなんて、かわいそうです。今度はどんな姿に生まれ変わるのかしら?死ぬ時は、さぞかし辛い気持ちだったでしょうね」
と私がいうと、うずくまっていた犬が、ブルブルと体を震わせて涙をボロボロと落としたのよ。
驚いたわ。
この犬は、翁丸だったの!
昨夜は、お咎めを受けている身なので素性を隠していたのよ、いじらしい上に賢い犬だわ!
私は、持っていた鏡を置いて、
「お前は翁丸なの??」
と聞くと、ひれ伏して鳴いて答えたの。
定子様もこの姿をみて、お笑いになったわ。
右近の内侍をお呼びになって、話して聞かせると、女房たちが大笑いしたの。
この話は、帝もお聞きになって、定子様のお部屋においでになったの。
「驚いたな、犬にもそんな心があるものなんだね」
とお笑いになったの。
帝付きの女房たちも、このことを聞いてこちらへ集まってきて、彼女たちの「翁丸!」と呼ぶ声に、翁丸は悪びれもせずに答えて歩きまわって見せたの。
「まだ顔とか腫れてるわ。傷の手当てをしてやりたいわね」
と私が言うと、女房たちが
「とうとう本音を言ったわね〜」
なんて言って笑うのよ。(私が翁丸びいきだから、こんなこと言ってからかうのよ!)
すると、忠隆様が話を聞きつけて、台盤所の方からやって来て、
「本当ですか??その犬を見てみましょう!」
と言ったので、私は、
「まあ、違いますよ。そんなモノは決していません!」
と人に言わせたんだけど、
「そんなに隠してもいつかは見つかってしまうもの。そうそういつまでも隠してはおけないよ」
と言われたわ。
その後、翁丸は帝のお咎めも許されて、以前と同じ、宮中で飼われる身に戻ったの。
それにしても、私の言葉に身を震わせて鳴き出した時の様子は、たとえようもなく驚いたし、いじらしいものだったわ。
他人から思われて泣いたりするなんで、人間しかしないと思っていたんだもの。
犬がそんなことするなんて、思いもしなかったわ。